スリランカ訪問記 その1

ハンバントタ紀行
〜インド洋のシーレーンを望み南部発展の未来を思う〜             藤井俊彦

マッタラ・ラジャパクサ新国際空港の到着ロビー正面玄関2014年6月 29日〜7月 6日、スリランカを旅した。1978年の初訪問以降、頻繁に訪れていたが、今回は9年ぶりとあって変わりゆくスリランカ(特にコロンボ)を実感することが多々あった。高層建築、交通渋滞、女性の洋装、そして高速道路だ。今回の目的の1つがハンバントタ行きだった。昨年3月オープンしたマッタラ・ラ ジャパクサ国際空港と大拡張工事が続くハンバントタ港を見ておきたいと思ったのだ。そこで移動手段だが、在来の鉄道(途中まででも)にするか? 11年11月開通した南部高速道路を走るか? コロンボーマッタラのフライトを体験するか? と考えたが、コロンボ在住の旧友、アヌルッダ・セネヴィラットナ氏がマイカーを運転してくれると言う好意に甘えて、彼にお付き合い頂くこととした。 南部高速道路は、コロンボの南、市内から小1時間かけて渋滞をけ出た所にICがあり、ゴール迄は約100km。この高速道路は、全行程の2/3が日本(1/3は中国)のODAで作られ、大成建設が請け負った。道理で車中から見ると日本の高速を走っているかと錯覚するほど路面がスムーズで快適なドライブだった。

  

1.ハンバントタ港は静かだった。

第一期工事で建設埠頭た大型船舶用埠頭‘イスラムの港’を意味するハンバントタは、南部海岸線の中ほどにある。14世紀アラビア人が開いた鄙びた漁港だったが、今をときめくマヒンダ・ラジャパクサ大統領の選挙区でもある新港は第1,第2,第3期の3期に分けて建設される。完成すればコロンボに次ぐ第二位となる港湾施設の一部は、'10 年11月完成し開港した。ハンバントタは天然塩で知られるていたが、町はずれにあった広大な塩田の大部分が、新港湾施設の敷地および港周辺に造成される工業団地に編入されて、塩田らしきものは見えなかった。コロンボ港が既にキャパシティをオーバ−している上に、他には大型貨物を扱える港がなかったから第2の港の開発が求められた。

 深海の地形的条件に恵まれているハンバントタの港湾施設は、必要総工費15憶$。その85%を中国輸銀の融資に依存している。その一部である第1工期分は3憶6000万$、中国港湾工程公司が請け負い、中国の技術者と労働者を使って建設した。出来たのは長さ600mの貨物用バース、乗客ターミナル、貨物取扱スペース、燃料積み込みエリア、倉庫、修理施設などで、既に稼働開始して3年半になるが、現在は専ら輸入車をハンドリングしている。最終工事の完工は、'25年になる長期プロジェクトである。

 広い通りから外れて建設用地が続く中を進み、ハンバントタ港湾公社の事務所らしい所で來意を告げ許可を貰うと、ドライバーと事務所スタッフが展望台まで案内してくれた。見物人が、HambantotaPort Development Projectと書かれた完成イメージ図や開港式の写真が掲示されている案内ボードの前に群がっていた。ガイドの解説は「本港は、スリランカがインド洋貿易の拠点として発展するために建設された。中国の多大な援助により、中国の最新技術が導入された。完成すれば幅210mのアプローチ・チャネルを持ち、水深17でコロンボ港より深く、10万tを超える大型船も入港できる」さらに「60m汎用バースが2つと310m給油バース、120m小型船バースで構成される」という。

 だが眼下に広がるサイトには、左手に大型貨物船が1隻コンクリートの岸壁に停泊していて、バースに近い3階建の事務棟などのビルがあるが、前方にはこれから造られる施設のために整地されたエリアが見えるだけで何もない。そして右手に広がる岸壁になるべき広大なエリアには、夥しい量の破砕された岩石が積まれているが、護岸用か?埋め立て用か?工事の進捗中にしてはクレーンなど機材も少ないうえに労働者の姿が見えないのだ。ところが後で判ったのだが、実は第2工期は港湾施設用地と燃料などの貯蔵および積み込みエリア建設のための工事が前月完遂しており、第3工期開始までのつかの間の一服時期だったようだ。

 元来ここに存在した小さな漁港を核とし、周辺の塩田をつぶして築港されたハンバントタ港は、いわば港を吸引力にして地域の産業開発を促進させようとする工業開発港であろう。貿易加工区は港内に造成されつつある。港湾建設サイトにあるBOIの現場事務所に立ち寄ると所長が「港外の2つのエリアにスリランカ企業ゾーン500エイカー、海外企業ゾーン2000エイカー、港内工業団地2000エイカー(内500エイカーを中国企業が仮予約済みという)を含めて合計4500 エイカーを工業団地として開発する」と説明してくれた。

 展望台に至る前に通り過ぎた工事現場の近くには15階建てのポートタワービルがあり、他には国際会議場、スポーツ施設もある。 港に付帯する設備として建設されるドリームアイランド(ドバイにあるような人工島)は船員たちや観光客にとってオアシスになりそうだし将来的には一大商業観光地に変貌する可能性も排除できない。

2.未来に期待が広がるマッタラ・ラジャパクサ国際空港

マッタラ・ラジャパクサ新国際空港到着ロビーのインフォメーションデスク 新空港は南部ハンバントタ県マッタラ、県都ハンバントタから北へ15km(コロンボから240km)に位置する。かつてはコロンボからゴール迄が3.5Hかかっていたが、高速が出来たことでハンバントタが近くなった。
 ’13 年3月18日、新空港にラジャパクサ大統領が搭乗する記念すべき第1便が着陸した。1967年開通のバンダラナヤカ国際空港のキャパシティが飽和する将来を見据えるとともに、代替空港が必要との判断から第2国際空港の建設となった。建設工事は、’10 年3月起工し、中国港湾工程公司が請け負った。建設費は2億900万$、内1.9憶$が中国のODAで賄われた。最終的には総敷地面積2000ヘクタールとなる大空港は、3500mの滑走路(幅60m)を持つのでエアバスA380など大型機も無論OKだ。

 さて新空港にはどんな航空会社が乗り入れているか? 国際線のトップランナーは、UAEの格安で知られるエアーアラビア。他に3つの国際線が入っていて,行き先はスリランカ航空は、北京、バンコク、リャドそしてマーレ。ミヒン・ランカはブッダガヤ。フライ・ドバイはドバイ。だが発着便数が極めて少ない。私が到着ロビーに居た3時過ぎ、ARRIVALの案内板には、0:05 Dubai—Colombo, 09:10Bangkok, 09:20 Colombo, 15:40 Colomboの4便のみだつたから推して知るべしであろう。

 ところでこの空港の建屋はバンダラナヤカ国際空港に比べて実に壮麗でモダンなデザインのアートに満ちている。到着ロビーにはスランカらしく仏像が鎮座し、天窓からは光がさわやかにそそぎ、中庭は憩いの場になっている。インフォメーションデスクの2人の若い女性が所在なげだったので話かけ歓談した。お仕事はいかが?と問うと「この仕事に就けてとても満足している。でもお客樣が少なくて手持無沙汰」と正直な答え。津波の時はどうだった?には「友人が一人波にさらわれて帰らなかった」と目を落とした。話題を変えて、コロンボーマツタラのフライトはどんな具合? には、「所要時間は30分。でもクルーズ時間は5分」という超ショートフライト。高度11000フィートの低空飛行だから壮大な景色を楽しめるし、離陸前にオーダーすれば飲み物サービスもあるそうな。

 立派な国際空港が出来たが、オープン以来、時に7割引きという格安チケットにもかかわらず座席は平均40%しか塞がらず、先行きが懸念される。政府としても拱手傍観しているわけではなく、地域経済開発のグランドデザインを練っている筈だ。ラジャパクサ大統領の陣頭指揮でダイナミックな政策が打ち出されるのを期待を込めて待ちたい。

 

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